安部公房の書物
理性の倦怠 八つの手をもて織りなせる 七つに光る魔の網よ 吾が怖るゝは汝が綾の 無形の夢の誘ひにあらず 沈黙して待てる恐怖の墓 面つゝむ美貌の面紗(きぬ)よ 夕べ渇きに湖辺(うみべ)に走る 吾が獣群を拒むのは誰 おゝ此の涯なしの死の巣ごもり 受動の傷に此の血失せ 昼の転身(みがへ)に果つる迄 天の没我に息絶ゆる迄